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2008年8月31日掲載
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6月3日に、市役所の一階と庁舎周辺で、環境フェスティバルがあった。そこに、グリーンの揃いのはっぴを着た若者の一団。「どうせ、駆り出され組で、イヤイヤやってるのだろう」と思いきや、どうも様子が違う。
この年頃は、人目を恥ずかしがったり、力の出しおしみするのが普通なのに、この若者集団は、思い切りのある気持ちのいい声をあげ、物怖じする様子がない。それに、大人に指図されて動いているのでもなく、自らが考えてきびきび行動している。 「この子たちは一体何者?」私は、目の前で立ち働く若者たちにがぜん興味が湧いてきた。
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そこで、責任者らしい人に声をかけた。その人は、布施北高校の清水先生で、若者たちは高校のデュアルコースの生徒とOBだという。聞きなれない言葉に戸惑っている私を見て、先生は、別のブースに案内してくれた。
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そこで最初にわかったのは、デュアルとは、二つとか、二重のという意味で、デュアルコースとは、学校と職場の二つの学びの場で勉強を進めるやり方だということだ。
しかし、普通に行われている短期集中の職業体験と違い、「週一通年」でしかも、丸一日職場に通う本格的な教育課程である。布施北高校では、2004年に文部省の研究指定を受け、2006年には大阪府教育委員会認定の「デュアルシステム専門コース」を確立。これは、普通科では日本唯一だという。 |
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ここで働いている若者たちは、「環境フェスティバル」の成功と、環境にやさしい商品の販売・普及に取り組む専門コースの実習中で、「デュアル生」の愛称で呼ばれている生徒たちだったのだ。今年、このコースを選択しているデュアル生は、2年が34名、3年が18名という。
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「どうしてあんなに“元気はつらつ”としているのだろう?」との疑問から
学校に訪問取材を申し込んだ。
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| 校内風景 |
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布施北高校は、荒本駅から少し南に位置する。校門をくぐると緑いっぱいのケヤキ並木。生徒たちが育てたゴーヤカーテンも見られる。
そこで迎えてくれたのは中嶋義博先生(48)。先生は、布施北高校で勤務10年、このデュアルシステム立ち上げにたずさわり、デュアルプロジェクトチームの首席(チーフ)の任にあたっている。
今の若者一般の問題として、人間関係の希薄さ、経験不足、表現力の低下がいわれるが、この高校も例外ではない。
その上、学業不振に苦しむ生徒や勉学条件が十分でない生徒の比率も低くない。先生は、「最初は、生徒の中にある困難さを、小・中学の教育や家庭に求める気持ちがあった」と率直に話す。しかし、何といおうと現実には生徒たちは3年間で社会に出て行く。
卒業生の大半は就職希望であり「この3年間で、なんとか社会で通用する力をつけなければ・・・」という、校長はじめ、先生たちの切実な思いから出発し、「自己肯定できる力・社会に生きる力」育成の模索が続いた。
そして、学校と保護者だけの取り組みではおのずから限界があると見極め、地域社会の力も借り、社会人としての自立をめざす教育を本格的に進めようと、デュアルシステムの導入に踏み切った。
最初は、不安いっぱいの選択だったが、生徒たちが学校の心配をはねのけてくれたという。
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| 話を聞いた中嶋先生 |
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地域の職場で生徒に実習させるということは、ともすれば地域に任せきりや丸投げになりやすい。このデュアルシステムはどうなのか。
布施北高校では、デュアル担当の先生たちが分担して、その日のうちに近隣市にまで広がるすべての職場を訪問し、職場と生徒のパイプ役になっている。
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デュアル生たちは、毎週火曜日に受け入れ先の職場に直接向かう。布施北高のデュアルシステムは、“一職場に一人”が原則なので、同級生に頼ることはできず、何でも自分ひとりで対処しなければならない。
職場に慣れるまでは心細いに違いない。緊張感やプレッシャーも相当なものだと予想される。
デュアル生たちは、そのストレスをはねのけて頑張っている。そんな彼らにとって、先生の訪問は何よりの励ましだろう。 |
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ある生徒の話を聞かせてもらった。写真を学びたいと思っていて、先生に学校に出入りのフォトスタジオを紹介してもらった。最初喜んでいたのだが、写真が撮れると思っていたのに、仕事の内容は事務的なものばかり。だんだん嫌気がさしてきて、悶々としていた。
それを察した先生が中に入り、フォトスタジオの社長さんと相談し、その結果、空いているカメラで朝の少しの時間、近所の風景が撮れるようになったという。本人もそれ以降、仕事に頑張りはじめたという。
この例のように、生徒たちは、一人ひとり、先生や職場の人達の励ましとサポートを受けて職場での実習に励んでいる。この取り組みを土台で支えるのが地域の協力だ。
現在、東大阪市を中心に70近くの企業・施設がこの取り組みを支援している。その内容は、仕事の指導と評価の両面を行い、生徒たちの成長を根気よく後押しする教育的なものとなっている。 |
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一日の実習が終わっても、生徒たちにはデュアル教室での振り返りの授業が待っている。実習報告書の作成はその一つ。
最初は報告に書くことを思いつかない。生徒たちは「別にありません」「昨日と同じ」「しんどかった」と書いて済ましたい。しかし、先生方は、そばに寄り添い「どこがしんどかった?」「一番心に残ってることは?」と語りかけ「それや!それを書いたらいいねん!」と細かくアドバイス。
その結果、デュアル生たちの気づきの力や書く力はぐんと伸ばされるという。一般に最近の生徒は語彙が少なく、文章力が貧弱だといわれているが、こういうていねいな指導を受けて卒業した生徒が、「鍛えてもらって、今は仕事で報告書を書くことが苦にならない」と話しているという。
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| 振り返りの授業によって、前回の職場実習体験が生きたものになり、次回の実習に向かう心構えが育つようだ。 |
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デュアル生たちは、さまざまな仕事分野に分かれて実習を積んでいる。その中で、経験不足や甘い見方からくる壁にぶつかりながら、一歩一歩確実に社会人への成長を遂げている。
このことは、彼らの実習を終えた感想文からも読み取れる。
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■ ものづくり分野
・・・最初は驚きとともに戸惑い、わけがわからないままに作業をしていました。・・・ボーイング旅客機の部品を製作していることや、有能な職人さんがいることを知り、全国でもめずらしい機械で製作している小さな部品にも生命力を感じ、製作や加工の一つ一つに重要さを感じるようになりました。
学校とは違い、従業員・職人の働いている姿の真剣さ、かっこよさを、そしてものづくりのやりがいを少しは感じ取れたような気がします。・・・(男子生徒) |
■ 保育・幼児教育分野
保育士は自分には向いていないのではないかと思っていましたが、今は保育士になりたいという気持ちになっています。
最後の実習で、子どもたちに挨拶しました。ある子が「先生のこと大好きです」と言ってくれて、とてもうれしかったです。先生は、私が進歩したところをほめてくださり、保育士になることを勧めてくださいました。保育士になる方法も教えていただきました。本当に励まされました。
デュアル実習を通して、たくさんのことを学ぶことができました。中でも、周りの人たちとのコミュニケーションが非常に大切だと学びました。(女子生徒)
・・・去年はインターンシップで保育園に行き、子どもたちと遊んだり身のまわりの世話をしたりし、今年も保育園で実習させていただいています。実習に行ってみて、自分がやりたいことはこれだと思い、保育専門学校に進学することに決めました。
僕にとっては、このデュアル実習が進路選択の決め手になりました。(男子生徒) |
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■ 介護福祉分野
・・・認知症や不機嫌な利用者さんへの対応や、利用者さんとうまく会話が続かないことも多々あり、悩んだこともありました。また、食事介助や入浴補助など、ひとつひとつの作業が、ひとつ間違えば利用者さんにケガや不安感を与えてしまうという怖さもありました。介護も福祉の知識もない私にとって、いまできることは、精一杯の明るさと笑顔しかないと思いがんばりました。
最後の実習日に、ある方が私との別れに涙を流していただいたとき、「あ〜 こんな私でも、少しは役に立ったのかな」と思いました。・・・さらに福祉のことや人間的なことを学ぼうと思っています。認知症についても勉強していきたいです。そして、私の祖父母を大切にしようと思いました。・・・(女子生徒)
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■ 営業分野
百貨店さんでは、果物売り場で商品の陳列、パンの販売店で商品の袋詰めなどを経験させていただきました。朝の挨拶から始まり、接客の時の対応の仕方など、特にコミュニケーションの大切さを学びました。
最初は恥ずかしくてなかなか声を出すこともできず、失敗の連続でした。しかし、毎回の実習で失敗点を見直し、自分が成長できるように努力しました。・・・(女子生徒) |
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*平成19年度 デュアルシステム専門コース 報告集より
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職場実習での成功やつまずきの体験から、コミュニケーションの大切さや社会性の大事さを自らつかみ取っていくデュアル生たちの成長の軌跡を見ることができる。
学校では評価されにくいやんちゃな生徒が、職場の人々にその仕事ぶりを認められ、自信を取りもどした貴重な経験も聞かされた
環境フェスティバルでの、若者たちに対する私の印象は、間違ってはいなかった。
この若者たちは、未だ発展途上ではあるけれど、すでに社会の洗礼をうけ、社会人への一歩を着実に歩み始めているようだ。 |
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*実習・授業の写真は学校側から提供を受ける
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<取材後記>
今回、図らずもデュアルシステムという新しい教育システムがこの東大阪に根付きつつあることを知った。しかし、どんな優秀なシステムでも、システム自体が人を教育することはできまい。人が人を教育するのである。この点で、布施北高校の取り組みを見てみると、先生たちの熱意がシステムを生かしていることを感じる。また、地元の企業・施設が学校の意気に応えて、大きな支援を惜しまない姿に、地域に根ざす教育の未来を見る思いがする。
11月末には、府立図書館のライティホールでデュアル生たちの発表会が開かれるという。できることなら、若者たちの成長の姿に応援を送りたいものだ。
楢 編集員
真木 編集員 |
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