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2010年5月21日掲載
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奈良時代の天皇から一般の人びとまでの歌を集めた万葉集。 これに歌われた植物を万葉植物と呼んでいます。 鑑賞用から実用的なもの、現在では雑草とされるものまでさまざま。 私たちが住む東大阪でも見られる万葉植物を順にご紹介します。 花の名のひらがなは万葉名、カタカナは現代名です。 |
<レポート:酒野>
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さきくさ ミツマタ(ジンチョウゲ科)
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ミツマタは、古くに中国から渡来した植物です。万葉集の『さきくさ』は、このミツマタではないかと考えられています。
晩秋、枝の先に白いビロードのような短毛でおおわれた“つぼみ”ができ、二月堂のお水取りが終わったころに開花します。春のまっさきに咲くので、『さきくさ』と名づけられたのでしょうか。 |
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漢字では三枝・三椏・三叉と表記されます。枝が3つに分かれていることからついたものです。
昔は、織物の材料にも用いたそうですが、現在では、紙の原料としてよく知られています。日本の紙幣は高品質で世界的に有名ですが、これは、ミツマタのおかげです。
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ミツマタは、今では、日本の特産品で、中国、四国地方の山地で栽培されています。野生化しているものも多く、私たちの愛する生駒山でも早春に花を咲かせます。花の季節に葉はありませんので、黄色い花と、茶色の樹皮が印象に残ります。 最近は、園芸品種の赤い花も見られます。 |
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この歌は、最初に懸詞が目に付きます。“先づ”の先(さき)と、三枝(さきくさ)のさきが、幸(さき)く、へと導いています。
歌の意は、『命さえ長らえていれば、きっと後に逢うことが叶うでしょう。吾妹よ、あまり恋に悩まないでください』というような内容です。
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三枝が詠み込まれているものには、他に長歌が一首あります。
作者は、山上憶良とも作者不詳ともいわれています。『男子名は古日に恋ふる歌三首』のうちの一つがそれです。
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<春日大社 萬葉植物園の案内版> |
三枝(さきくさ)は、『中』にかかる枕詞で、その部分は、子どものことばとして、『お父さんもお母さんも私のそばを離れないで。私は、二人の真ん中で寝るんだ』というものです。三本の枝をそれぞれ父・子・母と見立ててうたわれているのでしょう。
この部分は、愛らしい子どもの様子が描かれていますが。この子どもの挽歌(人の死を悼む歌)と知ると、切なさがこみあげてきます。万葉集には、人間社会の悲喜こもごもが集められています。
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<万葉植物探訪シリーズ>以下は 既報の植物 クリックで見られます |
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