2008年5月7日掲載
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奈良時代の天皇から一般の人びとまでの歌を集めた万葉集。
これに歌われた植物を万葉植物と呼んでいます。
鑑賞のための花から実用的な植物、現在では雑草とされているものまでさまざまです。
私たちが住む東大阪でも見られる万葉植物を順にご紹介します。
一般に“萬葉集”の文字を使いますが、ここでは万葉集で表記します。
花の名のひらがなは万葉名、カタカナは現代名です。 |
(酒野通信員) |
つばき(ヤブツバキ)ツバキ科
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私たちのまわりには、多くの種類のツバキがあります。
万葉集にツバキと詠まれているのは、ヤブツバキのことで、9首あります。
暖地では冬から花が咲くこともあり、冬の花と思われがちですが、ツバキは春の花なので椿の文字が使われます。ただし、この文字は日本の当て字だそうです。 万葉集では、椿、海石榴、都婆吉、都婆伎などの文字が使われています。
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サザンカのような花 |
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バラのような花 |
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椿の歌の中で最も有名なもので、この歌は秋9月に詠まれたと記されています。巨勢山の多くの椿よ。今は秋の美しい葉をした多くの椿を見ているが、春の椿の花がいっぱい咲く巨勢の野を見たいものだ・・・という内容だそうです。
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奈良時代から続く東大寺二月堂の修二会(しゅにえ)は、お水取りともいわれます。
夜空を焦がすたいまつの炎は、テレビでも紹介され、みんなにもよく知られています。しかし、その修二会の仏前に和紙の椿が供えられていることや、それが、練行衆の僧たちによって、行の一つとして手作りされているということはあまり知られていません。
赤い花弁は、紅花染め。雄しべの黄色はくちなしで染められています。作り方は古代から綿々と受け継がれています。造形はシンプルですが、椿の形をうまく表現していることに感心させられます。
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ツバキの灰(枝、葉を焼いたもの)は、染色の世界では重要な媒染剤(発色と定着をさせる役割のもの)として知られています。」灰を水に溶かした上澄液を灰汁(あく)と呼び、アルミが含まれています。
特に、紫を染める場合には必需品で、万葉集に「紫は灰さすものぞ・・・」と詠まれています。
メジロもよく集まり、女の子たちもままごと遊びでお世話になったツバキですが、今ではサザンカと見分けがつかないような種類まで、多くの種類の花があふれています。 けれど、私は、生駒の山で見るヤブツバキの花の素朴な美しさにほっとさせられます。
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