2013年6月20日掲載
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メタボの龍が一大決意。なんとも身につまされ、「がんばれよ」と、声をかけたく
なる。絵と字が渾然一体となった墨彩画の独特の世界。現実にはありえないの
に、なぜか懐かしく、心に響く。今回のアトリエ訪問は、「鬼」や「龍」を主なモチ
ーフとする墨彩画家、阪口真智子さんの世界に迫る。
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異形のものが
大活躍
墨彩画の主人公は、ご覧の通り、鬼や龍といった異形のもの。
鬼たちはまるで私たちの世界の住人のように、喜びや悩みを体いっぱいに表現している。その姿はユーモラスであり、またペーソスを感じさせる。
自分の隣にでもいそうな親近感で、私たちは鬼の世界に引き込まれる。 |
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作者は、墨彩画家の阪口真智子さん。本名は織田真智子。東大阪で生まれ育ち、枚岡の高台にアトリエを構える。
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子どものころから絵心のあった阪口さん。親に美術への道を反対され、薬学の道に進むことに。しかし、未練は断ちがたく、絵を描き続ける。
25歳のときには大阪市内で個展をひらいている。若いときは制作に行き詰ったこともあるが、しだいに「自分は自分」と、腹がすわってきたという。 |
鬼の墨彩画家 阪口真智子さん アトリエにて |
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制作現場を拝見!
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制作中の絵を見せてもらった。鬼のうっとりと幸せいっぱいの表情に魅了される。 |
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何故に鬼?
「何故に鬼・・・?」との問いに、「若い頃、人物を描いていたが、相手の気に入るように描くことに抵抗があって、遠慮のない架空の存在にモチーフを切りかえた」という返事。「今では、鬼は自分自身と思っている」とつけ加えた。 |
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デッサンの秘密
デッサンの仕方をちょっとのぞかせてもらった。
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紙に墨を流し、墨の痕から鬼のしぐさや表情を探りつつ、「鬼はこんなこと言いたいやろ」とか、「鬼にこんなこと言わせたい」と、しだいにイメージを膨らませていくという。
“墨の中から鬼があらわれる”とは、まるで、一本の木から仏を彫り出す仏師の作業にも似ている。 |
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ここが鬼の絵が生み出される“創作の現場” 岩絵具・水干絵具などがならんでいる |
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なんとも豊かな鬼の表情 |
あなたなら、この鬼たちの表情に、どんなセリフを添えるだろう?
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元気がもらえる
鬼の墨彩画
「人が好き」という阪口さん。鬼の表情やしぐさにも、慈しむ心が滲みでている。
鬼の目をじっくりとご覧あれ!目は口ほどに物をいい、という格言が浮かんできそうではないか。
弱り目の鬼さんの絵には、「まあええやんか」などの、とことんやさしい言葉が添えられている。
気持ちが晴れないとき、この絵から励まされ、元気をもらえそうだ。
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なんとも歯切れの
いいことば
一方で、自分のことを“本音で言う性格”と表現する阪口さん。
傲慢な者にはズバッと切り込む。テレビカメラの前でそろって頭を下げる、おえらいさんを連想させる絵がある。
添えられた言葉は、痛烈な風刺が効いて心地よい。
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おえらいさんたちの記者会見にくらべ、はるかに神妙な鬼たち |
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額から鬼がしゃべりかける
大江山にある鬼の博物館のオープン4周年に、阪口真智子の鬼語る―鬼が来たりて福も来る―と題して記念特別展がもたれ、以降、作品の一部は常設展示されている。
個展やグループ展を毎年おこない、展覧会への出品前は、とてもハードな生活になる。まわりからは大変にみえるけれど、「描くのを楽しんでいる」と言いきる。どんな鬼にしようかと、考えること自体に喜びがあるようだ。それを本人は、「鬼と対話する」と表現する。
画家としてのこれからの抱負を問うた。阪口さんいわく・・・
「額の中の鬼が、『こうしたら楽やで!』『こうしたら楽しいで!』と、しゃべりかけるような絵を、欲得なく描き続けたい」と。 |
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それにしても、素晴らしい画家が、この東大阪に住んでいるものだ。直接話を聞き、間近に原画を見られたこと、そして、みなさんに紹介できることに喜びを感じる。
河内平野の百八十度の夜景を見つつ、アトリエを後にした。
ルポ:楢よしき |
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