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2009年1月25日掲載
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みなさん、知ってますか?今、東大阪で公立保育所の廃園・縮小問題がもちあがっています。
市長が、金岡保育所の廃園と、鳥居・岩田・大蓮・友井の四保育所の縮小の決定を下したというのです。
父母の会を中心に、考え直してほしいという声が広がっています。
なぜ廃園・縮小なのか・・・。「どーなってるの?」と調べてみました。
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廃園・縮小の対象とされた5つの保育所。そのなかでもとりわけ、廃園の対象となった金岡保育所で、反対に立ち上がったお父さんお母さんたちがいるというので、その代表の大和皇大さんに話を聞くことにした。
1月中旬の夕方、待ち合わせの場所は、近鉄大阪線弥刀(みと)駅前のハンバーガーショップ。
大和さんは、チャイルドシートをつけた自転車に乗ってやってきた。
穏やかでやさしそうな若いお父さんだ。
「金岡公園で遊ぶ園児たちをよく見かけますが、廃園というのは本当なんですか?」と単刀直入に聞いた。 「寝耳に水です。私たちのような共働きの家庭には大変な問題です」と淡々と、しかし毅然と語る大和さん。
この話は、「寝耳に水」と・・・。いったい何があったというのか?
写真は、「金岡保育所守る会」代表で、2児の父親の大和皇大(きみひろ)さん(32歳)
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<大和さんの体験を再現するとこうなる。>
2008年(H20)10月初旬
「金岡保育所父母の会」代表をつとめる奥さんの英美さんの耳に、へんな噂が届く。
あるお母さんが、永和にある社会福祉事務所に保育所入所の申し込みにいき
金岡保育所への入所を希望したところ・・・
「金岡保育所はなくなるから、ほかのところに申し込まれた方がいいですよ」
と窓口で言われたという。
10月6日(月) 英美さんは、おどろいてご主人に相談。
大和さんは、真偽を確かめるため市役所の保育課に電話。
「なんですかその話?」「そんなことまったく決まってない」とK保育課長は断言。
「何か変化があれば連絡がほしい」と大和さん。
11月4日(火) 父母・職員で組織する「保育所連絡会」から、保育所廃園・縮小の動きがあり
金岡保育所が廃園対象との知らせが保育所の父母に届く。
11月6日(木) 知らせに驚き市役所に電話。10月6日に対応したK保育課長が出る。
「9月25日にすでに市長が廃園・縮小を決めていた(市長決済)」
「10月6日に言えなかったのは、まだ市民に伝える段階ではなかったからだ」
「ばたばたしていて、いままで知らせられなかった・・・」とK保育課長。
大和さんは、役所の対応に抗議して、保護者への説明や市長との面談などを求め
ここから「金岡保育所守る会」を始めたという。
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この話を聞くかぎり、役所のやり方は不誠実といわれてもしかたがない。9月25日(木)に市長が廃園・縮小を内々に決めていて、役所の窓口職員までも知っている。しかし、議会側や、当事者のお父さん、お母さんなどの市民側には知らされていないのは正常とはいえまい。
市長に保育施策を答申した「保育福祉専門分科会」(諮問機関)の議長は、実施にあたっては「市民の合意」を得るように念押ししていたという。しかし、現実に父母たちが「寝耳に水」の状態というのはいただけない。
「市民の声をすべて聞き入れよ」という立場ではないが、事実を知らせ、市民の納得を得る努力は最低限必要ではないか。
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なぜ今、公立保育園の廃園・縮小なのか?役所の説明会にも出席している大和さんに聞いた。
- 保育所が老朽化しているからとか、先生の人数が足りなくなる恐れがあるからと言っています。
- G地域は「待機児童がゼロになった」ので金岡保育所の廃園が決まったと説明されています。
- 最大の理由は「少子化対策」だと言っています。
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(廃園の対象とされている市立金岡保育所)
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まず結論を先に言えば、この理由を持ち出して廃園・縮小を市民に納得させようとしても無理ではないだろうか。
施設の管理は役所の責任で、市民の責任ではない。小学生でも、「なら、建て替えてあげれば・・・」「先生を雇えばいいんじゃない」というだろう。
市役所は老朽化したと、巨額の費用で建て替えている。消防署も老朽化したというので新しく建て替わったのはつい最近のこと。
同じ老朽化で、片方は建て替え、片方はつぶすという「判断の根拠」を示す必要があるだろう。
市役所のビルに比べれば、ほんとうにちっちゃな建物。
「建て替える財源がない」と、立派になった市役所の建物の中から言うのでは、説得力が感じられない。
老朽化や先生の減少が、廃園・縮小の真の理由なのか?
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そもそも、「待機児童」というのは何を意味するの?インターネットのフリー百科事典「ウィキペディア」で調べた。
待機児童(たいきじどう)とは、保育所に入ることを希望し、実際に入る資格を有するにもかかわらず、市町村が保育所(認可保育所)の提供を行わないために、入ることができない状態にある児童である。
下の表は、役所が金岡保育所の廃園の根拠とした統計である。
(単位は人)
2008年度 |
定員 (ア) |
4月1日入所数
(イ) |
入所申込児童数
(ウ) |
新規入所
(エ) |
未入所児童数
(オ) |
待機児童数 (カ) |
全体 |
6,206 |
6,759 |
2,257 |
1,502 |
755 |
156 |
東 |
1,229 |
1,388 |
532 |
319 |
213 |
50 |
A地域 |
629 |
708 |
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101 |
30 |
B地域 |
600 |
680 |
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112 |
20 |
中 |
2,287 |
2,495 |
889 |
562 |
327 |
63 |
C地域 |
839 |
918 |
|
|
149 |
42 |
D地域 |
1,448 |
1,577 |
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178 |
21 |
西 |
2,690 |
2,876 |
836 |
621 |
215 |
43 |
E地域 |
450 |
494 |
|
72 |
19 |
19 |
F地域 |
1,130 |
1,239 |
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101 |
24 |
G地域 |
1,110 |
1,143 |
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42 |
0 |
地域わけは→ 参考 地域分け図
市役所ホームページより
入所申込児童数(ウ)−新規入所児童数(エ)=未入所児童数(オ)
2,257人 1,502人 755人
入所できなかった児童が東大阪市全体で755人、G地域で42人いることがわかる。
ウィキペディアの解釈に従えば、この児童たちが待機児童となるが、役所の統計では、右側に別の待機児童の項目があり、うんと少なくカウントされている。いったいどーなってるの?
待機児童の数え方を示す「国基準」があった
国は、待機児童をなくすよう自治体に求めているが、その際、待機児童を数えるための独特の基準を自治体に示している。それを「国基準」というらしい。
申請時の児童の状況から、待機児童か、待機児童でないかを判定する指針だ。
この指針に合わせて東大阪の未入所児童のうち、待機児童でないとみなされる理由と、その児童数の調査結果を入手した。(下の表)
*説明部分は「どーなってるの」で加筆
待機児童からはずす理由 |
人数 |
専願 |
保育所を一ヶ所しか希望していない家庭の児童は、切迫した状態と考えられず、待機児童とみなさない。 |
246 |
簡易保育施設 |
どこかの保育施設にすでに預けられている児童は、待機とみなさない。 |
8 |
親類 |
親類に預けられている児童は、待機とみなさない。 |
53 |
幼稚園 |
幼稚園に通っている児童は、待機とみなさない。 |
4 |
育休 |
親が育児休暇をとっている児童は、待機とみなさない。 |
253 |
その他 |
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35 |
計 |
(*)599 |
未入所児童数(オ)−待機児童とみなさない児童数(*)=待機児童数(カ)
755人 599人 156人
すなわち、役所の立場は、国公認の待機児童数は156人で、その解消には責任を持つということ。
G地域では、この計算で待機児童はゼロなので、金岡保育所を廃園にするという結論が導かれる。
しかし、これは子育て世代の現実を反映しているのだろうか?
前出の大和さんは、「“専願”は切迫してないということではなく、兄弟で違う保育所に預ける場合など大変なケースもある」という。
そして、「入所希望者はもっとたくさんいます。あまりにも狭い門で、はじめから申し込みをあきらめている人が身近にもたくさんいて、何倍もの潜在的な要望がある」と説明する。
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“少子化対策で保育所を減らす”・・・・だれがそんなことを言ってるの?
普通の感覚では、安心して子どもを産み育てる環境を整えてこその少子化対策ではないか?
しかし、「社会福祉審議会」の「児童福祉専門分科会」の市長への答申をみると、少子化を憂い、少子化を食い止めるために対策が必要としつつ、結論では公立保育所の廃園・縮小を勧めている。
ということは、公立保育所の廃園・縮小が少子化対策になるという論旨になる。だが、少子化対策に有効だという根拠が示されているとはいえない。。
それとも、東大阪の少子化対策は、少子化を止める対策ではなく、子どもが減ることを見越した経費削減対策という意味なのか?
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保育所は、少子化を防ぐというデータも
前出の大和さんは、父母が手分けして兄弟調べをした結果、興味深いデータがでたという。
2005年度(H17)の合計特殊出生率*は、東大阪で1.16人。G地域の公立保育所で平均2.29人。
金岡保育所では2.26人という。保育所が高い出生率を保証しているとも受け取れる数字だ。
少子化を食い止めるのが、国民的合意だ。
どうすれば有効な少子化対策になるのか、市民的な論議の必要性が見えてきた。
しかし、今のままでは4月からの入所決定は、父母たちの合意のないまま廃園・縮小の既定方針で進みそうだ。
ここは、役所が議会を交えて時間をかけ、市民の声を十分に反映しながら解決すべきでないだろうか?、性急な結論だけはさけてほしい。
*合計特殊出生率:統計指標の1つ。一人の女性が一生に産む子どもの数
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(縮小の対象の市立岩田保育所) |
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今、どこの先進国においても、国の衰退につながる少子化の危機に直面している。
そこで、先進国では、真剣で具体的な施策を打ちつつある。
子育ての「自己責任論」など入る余地もなく、「民営化」で、民間に丸投げすることもない。まして、目先の「経費削減」は問題にならない。国を挙げて出来ることは何でもするという取り組みが始まっている。
日本も、ここで百年の計を逸すようでは、大きな禍根になると思うが、みなさんのお考えはどうか?
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議員の質問と市長の答弁を聞きに駆けつけた若いお母さんたち。
(1月16日本会議傍聴)
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若い人たちに「子育ては東大阪で」と言わせたい。
中小企業の街・東大阪は、共働きが圧倒的に多い。
働く女性がこんなに多い街で、さらに発展するためには、安心して子育てできる環境がなにより大切だと思われる。
将来的に、若い労働力、新しい技術、元気な起業が不可欠だ。
「東大阪は安心して子育てできる」と若い人が集まってきたら・・。
そして、どんどん後継ぎが現れたら・・・。ずいぶんと活気溢れる街になるのでは。
それこそが、すべての市民が望むことではないだろうか。
若い人がたくさん住む街にするため、少子化問題・保育所問題をみんなで考えていく必要があるのではないだろうか。
楢 よしき 通信員 |
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