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2009年7月23日掲載
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今、環境問題が大きな注目を集めつつあるが、ものづくりの街東大阪から全国にむけて、便利な紙容器の普及と紙リサイクルをセットで発信し、環境問題に敏感な若い人たちに反響をよんでいる企業がある。
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ここは、近畿大学のキャンパス。学生たちが語らいながらお昼の弁当を食べる和やかな風景。今回紹介したいのは、学生たちが手にしている弁当容器。
名称を『ホッかる』という。“ホッ”とすると、もう“かる”の大阪ならではのネーミング。
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弁当容器『ホッかる』とは?
この弁当箱は、本体が紙製で、内側に透明フィルムが貼り付けてある。
食べたあと、汚れた内側のフイルムは、はがしてゴミ箱へ。
きれいな紙は、再生のため回収される。リサイクル可能な紙容器だ。
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この製品の開発と普及に取り組んでいる、紙器メーカー梶w秀英』会長で、自称「笑呼老人」の上田秀行さん(67)に聞いてみた。
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『ホッかる』開発の上田秀行さん |
『ホッかる』開発の動機は?
紙という貴重な資源を扱う『秀英』にとって、大量消費・大量廃棄の今までの仕組みから、資源再利用への転換が「時代の要請」と考えた。 およそ12年前のこと。
作りっぱなしでなく、回収・再生まで視野に入れ、製造責任を果たしたいと思った。
『ホッかる』の特徴は?
内側フィルムは、燃やしてもダイオキシンが発生しない。
容器は“折り紙式”製法で、その場で伸ばしやすく、平らにすればかさが減って扱いやすい。
紙は、保温性のある三層構造になっているし、デザイン性にも優れている。 |
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開発・普及のいきさつは?
2000年中之島まつりで『ホッかる』が採用され、ゴミが大幅に減少することがたしかめられた。本格的な開発は、早稲田大学の学生環境NPO『環境ロドリゲス』との出会いから。『ロドリゲス』、早大生協、秀英の三者が協同し、製品の改良、回収と再生システムの工夫など、つっこんだ実践ができた。苦労もあったが、若い人たちとの仕事は実り多く、感慨深い。現在は、東大阪ブランドの認定を受けている。
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容器の弱点は?
弱点といえば、利用者にとって分別に一手間かかるということ。
しかし、不便さゆえ、協力を求めて対話する余地が生まれる。
対話を通じ、消費者と製造者が手をつなぐ“リサイクル”の輪を広げたい。 |
近大キャンパスで女学生と話す上田さん |
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生協専務理事の入船行由さん |
『ホッかる』を採用する近畿大学生協の専務理事、入船行由さんに聞いてみた。
多人数に短時間で食事をしてもらうため、『ホッかる』は大活躍。再資源化の点も重要で、学生たちが力を発揮している。近大のオリジナルデザインを募集して認知度を上げたり、回収率を上げるための工夫、再生紙を使った商品の開発などに努力しているという。
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弁当の販売風景 |
再生紙を利用した商品 |
ちょうど居合わせた学生委員会の環境班の二人から話が聞けた。
『ホッかる』回収率のペナントレースが終わり、結果待ちだという。近隣の八大学(近大・阪大・府大・市大・電通大・大教大・和歌山大)で競い合った。近大は人数が多いので呼びかけも大変だったらしい。 |
班員の伊藤雄一郎さんと班長の高尾篤さん |
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このイベントを通じ、みんなが環境問題を考えるきっかけになれば成功という。
環境班は、キャンパス全体の環境改善にも取り組んでいると語ってくれた。
『ホッカかる』秀英のホームページ |
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取材を終えて
12年前に上田さんが一念発起し、従業員を説得して始めた製品開発。山あり谷ありの道であったろう。現在、『ホッかる』の採用は、全国32大学生協に広がっている。若い人たちが、環境に対する上田さんの志に共感してのことではないだろうか。最近、“エコをつけて売らんかな”の大手商法がはびこっているが、回収・再生まで責任を持とうとする上田さんの心意気を学んでほしい。
上田さんは、取材の折、「私は、生甲斐を感じてやっていますが、従業員さんたちには苦労かけてます」と漏らしておられた。まじめに取り組む企業が報われる社会環境であってほしい。イベントに、学園に、企業食堂にと、輪が広がることを期待する。
リポート:村上&楢
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