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2009年12月8日掲載
2012年11月14日一部改訂
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おばあちゃんの雰囲気に、温かい包容力とやさしさが溢れている。幼女との語らいもほほえましい。画面には、きっちりと生活が描きこまれている。この絵の作者、大西ひろみさんに、おばあちゃんへの愛着や、絵に託す想いを聞かせてもらった。
(絵:絵本『あっちゃんのはたけ』ひさかたチャイルド刊) |
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アトリエ訪問
▼菱江交差点近くの菱屋東に、大西ひろみさんの自宅兼アトリエがある。ご主人とともに一男一女を育てたこの居宅が、主婦作家の生活感溢れる作品が生まれる現場だ。
▼訪問すると温かく出迎えられた。ひろみさんは生まれも育ちも東大阪の人。荒川小から俊徳中へ。高校は山本高校という。
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注目される絵本作家大西ひろみさん
(近くの菱屋東第一公園にて)
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絵本作家への道 |
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大西ひろみさんの初期の作品 |
▼若いころ漫画家を志し、京都精華短期大学美術科デザインコース・マンガクラス(現京都精華大学マンガ学部)に進学。佐川美代太郎教授の厳しく徹底した指導を受ける。反発もしたが、今となってはそれが基礎を培うことに。佐川先生の、「10年頑張りなさい」の言葉が励みとなる。
▼結婚後、子育てと家事に追われ、一枚の絵を描くのもままならない状態に。悶々とした日々が続く中、意を決して、堺にあるエッチング(銅版画)の大家・河合勝三郎先生の門をたたく。
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▼河合先生の指導を受けながら、絵本の公募に出品しようと目標が定まったという。ひろみさんは、当時のことを、「家事と制作を無理やり両立させる“怒涛のような毎日”だった」と語る。また、「夫の協力なしにはできなかった」とも。 |
絵本が生まれる現場! |
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『ふたをとったら びんのなか』
さまざまなエッチング技法が見られる
(ブックローン出版刊)
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▼一年ほどで完成した絵本、『ふたをとったら びんのなか』が、絵本作家の登竜門、『ニッサン童話と絵本のグランプリ』で、『絵本大賞』受賞という快挙となる。
▼絵本出版は1986年、大学を卒業して10年目。ちょうど、恩師佐川先生の「10年頑張れば・・」の言葉に応えることができた。ここから、ひろみさんの絵本作家生活が始まった。 |
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▼その後、子育てや家事と両立させながら、出版と個展を積み重ねてきたひろみさんの画風に変化が・・・。
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自分の描きたいものを
新しいキャラクターの登場
▼ひろみさんには、いつか描きたいものがあった。それがおばあちゃんだ。ひろみさんの心には、自分を可愛がってくれたおばあちゃんの印象が、今も鮮明に残っている。しかし、エッチングの技法では、おばあちゃん”の雰囲気が表現できない。
▼悩んだ末、おばあちゃんを描こうと決心し、エッチング技法と決別することに。ひろみさんは、「苦労して身につけた技法なのにね・・・」と、屈託がないが、その過程では相当の苦闘があったにちがいない。 |
つけものを漬けるおばあちゃん
JAグリーン大阪広報誌『FOREST』表紙より
(表紙に連載中) |
▼こうして、柔らかな水彩のタッチと、ほのぼのとした話の絵本、『おばあちゃんの はたけ』が生まれた。
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“おばあちゃんからのメッセージ”
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ユーモアたっぷりの絵 |
▼作品に登場する“おばあちゃん”には、どっしりとした存在感がある。
そこには、戦中戦後、『もったいない』を体に沁みこませ、たくましく生き抜いた“ひろみさんのおばあさん”の実像が投影されている。
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生活感あふれる絵
▼ひろみさんの願いは、作物を育み、ものを粗末にせず、命を大切にしたおばあちゃんの“元気な生き方”を、子どもたちへ生活感溢れるメッセージとして伝えること。
▼そのためには、生活の中から題材を見つけるよう心がけ、青虫一匹にも観察を怠らない。 |
青虫の観察で、葉が穴だらけの野菜
(家の前のプランター) |
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不思議な構図が魅力
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▼ひろみさんの作品の絵には、まるで魚眼レンズでのぞいたような表現が見られる。おもしろい空間の切り取り方で、安定感と躍動感が同居する不思議な構図だ。「幼い頃は、世界がこんな風に見えていたのか・・・」と、思えてしまう。
▼あたらしい絵の境地を開拓し、さらに前進する絵本作家大西ひろみさんの活躍に注目!
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取材を終えて
取材中に、娘さんの彩織さんの話題が出た。「娘の作品なんです」と、母親の素顔がのぞく。
娘さんは、サリngROCKの名で、若くして劇団『突劇金魚』をひきいる新進劇作家。昨年、OMS戯曲大賞を受賞している。
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大西ひろみさん自身については、2010年2月3日(水)から21日(日)のあいだ、東大阪市民美術センターで、企画展『大西ひろみ 絵本の世界』が開催される。2月7日(日)2時からは、『絵本の中のおばあちゃん』と題して、記念講演を行うことになっている。
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レポート:駒&楢
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