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ふるさと東大阪2008年10月17日掲載





バイオビジネスに挑む(上)

 最近、日本でも地球温暖化や生物種の絶滅が大きな問題として取り上げられるようになった。ところが、10年以上も前に、当時まだ広く知られていなかった環境問題に着目し、世界的にも注目される分野を切り拓いた技術者が東大阪にいる。

 その人は安川昭雄さん。75歳。株式会社「アドバンス」の会長だ。安川さんは、企業を退職後、数人の仲間とともにバイオビジネスの新しい会社を興し、環境にこだわった製品開発を続け、大きな成果をあげつつある。若者の育成にも熱心で、力を注ぐ。
 ものづくりの町東大阪で、環境問題に先駆的に取り組む人に迫り、二回に分けてレポートする。


新たな挑戦!バイオプラスチックの開発から

 安川さんは、ある企業の開発員を50年間つとめあげ、退職後、一念発起、仲間と起業に取り組みはじめた。「エコロジーに貢献できるビジネスを」という志からだ。

 最初の挑戦は、バイオプラスチックの研究開発から。バイオプラスチックとは生物資源から作られたプラスチックのことである。
 石油が原料のプラスチックでは、限られた地下資源を減らすばかりか、焼却によって温暖化の原因となる二酸化炭素(CO2)を増やしてしまう。トウモロコシのでんぷんを原料にしたバイオプラスチックではその心配がない。
 太陽と水と二酸化炭素で出来たでんぷんは、生態系の循環サイクルにきちんと組み込まれるからだ。
 
 安川さんはさらに、このバイオプラスチックがすみやかに土に還るよう、生物分解性を強化する研究を続けた。こうしていまでは、いくつかの商品化に成功している。

 一つの例を紹介しよう。茶農家の「茶の木にやる肥料が雨で流れて不効率。なんとかならないか」という声に応え、東大阪の機械メーカーと連携して、土に還るバイオシートと、シートを張る機械を組み合わせた製品を開発し喜ばれている。 
 肥料が節約できるばかりでなく、バイオシートは古くなっても廃棄処分の必要がなく土に還っていく。河川に肥料が流れ込まず海の富栄養化を防ぐ点でも環境にやさしい製品である。
安川昭雄さん
熱をこめて語る 株式会社「アドバンス」の
 会長 安川昭雄さん


微生物を味方につけ、水の浄化に成功

 安川さんの挑戦はさらに続き、次の飛躍となる水の浄化の研究へとつながる。
 きっかけは、京都平安神宮の池がヘドロで困っているとの情報がもたらされたことから。その前に難題があった。ヘドロ除去にあたっては、貴重な生物が住む池の生態系を破壊しないという条件だ。
 
 安川さんは、この時、微生物が有機物を分解する能力を活用すれば何とかできそうだと見通しをもち、解決に名乗りをあげたという。その確信は、生物分解性の研究で培われたものだった。

 予備実験ののち、みごと池のヘドロをなくし水の浄化に成功した。ヘドロをかき回して取るのでなく、有益な微生物の力で自然にヘドロが消滅したのだ。その成果が、2001年に滋賀県大津市で行われた「第九回世界湖沼学会」で発表された。
 そこでは、微生物を味方につける発想とすぐれた技術に、大きな反響があったという。安川さんの面目躍如といったところだ。



ついに、バイオ石けんシリーズの誕生へ

 安川さんは水の浄化の研究をもとに、微生物学者と有益な微生物の共同研究を進めた。  
 家庭で手軽に使える汚れおとしの“バイオ石けん”の開発と商品化への道だ。

 バイオ石けんとはいっても、従来の界面活性力を利用した石鹸や合成洗剤とは根本的にちがった考え方だ。
 今までは、汚れを泡でつつんでひきはがし流している。そのため、洗浄力を上げようとすれば、より強力な界面活性剤を使わなければならない。それは、肌に悪影響を及ぼすばかりでなく、川や海に流れ込み生態系に大きなダメージを与え続けている。

 安川さんの“バイオ石けん”の考えは、有益な微生物の力を借りて、汚れそのものを分解してしまおうというものだ。
 しかも肌にうるおいをあたえ、使って流したあとも下水の浄化に役立てようというコンセプトだ。環境にやさしいというより、環境を守るといったほうがいいかもしれない。

 産学協同の研究で洗浄力や安全性が確認され、2002年、家庭で手軽に使えるアドバンスのヒット商品
「とれる・NO.1」が誕生した。
とれる・NO.1
 そして、その姉妹品として数々の製品を生み出すことになる。粉末タイプ、ウエットティッシュタイプ、ペットの消臭から、化粧水、シャンプーまでと、まさに万能クリーナーのような品揃えだ。
 製品の一部は、「東大阪ブランド」として市役所の陳列ケースでも紹介されている。



 - 取材の中で -

 安川さんは、大阪産業大学との産学共同で多孔質チタンセラミックを利用した商品開発や、京都の自治体と共同で、環境にやさしい舗装の実施など、次々と多彩なビジネスを展開している。
 ものづくりの町東大阪で、環境ビジネスの発展にとってなくてはならない存在のように思える。

 話は変わるが、インタビュー後、私も「とれる・NO.1」を使ってあれこれ試してみた。汚れているのに洗えない布製のカメラケースにスプレーしてみたら、しみのような汚れは取れた。あちこちに吹きかけてみて洗浄力を確かめることができた。万能クリーナーといううたい文句も納得できる。
 合成洗剤のように、あとで成分を洗い流すこともいらず、手や肌がしっとりと潤っているのを感じる。これからもいろいろ使い勝手を確かめていきたいと思う。
 しかし、私が一番大事だと思ったのは、私たち消費者の発想や生活の仕方に転換を迫る商品ではないかということである。
 
 汚れを早く落とすため、また、カビを根こそぎ取るためにと、これでもかこれでもかと強力な薬剤が登場している。ついには「ガスを吸ってはいけない」「手についたら危険です」などという商品をありがたがる風潮は、地球環境にとって、はたまた人間自身にとってどうなのかという問いかけだ。
 環境に負担をかけない、地球にやさしい「ものづくり東大阪」の最先端をのぞかせてもらった。

通信員 楢 よしき

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