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2008年10月30日掲載
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「早ければ5年後には、夏の北極海から氷が完全に消える。」10月21日、世界自然保護基金(WWF)が地球温暖化の予測を発表した。温暖化対策はまったなしといったところだ。
株式会社「アドバンス」の会長 安川昭雄さん(75)は、人間の自然に対する向き合い方、つきあい方について語ってくれた。
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「人間は、自然環境や、そこに棲む生き物とのかかわりなしには存在できない。
しかし、便利さを追求するばかりの生活は、そのことを忘れさせる方向に働くのではないか」として、安川さんは、2つの問題を例示した。
一つは、”除菌・滅菌・殺菌”の風潮。
抗菌グッズが大流行だが、そこにおおきな危惧を感じるという。
人間のもつ免疫力を強化しないで、グッズにたよるやりかたは、つきつめれば、それがなければ人間が自然の中で生物として存在できなくなり、自然の一部ではなくなるという問題につきあたる。
二つには、人間の五感の鈍化だ。
五感とは言うまでもなく、味・聴・視・臭・触の五つの感覚で、人間は、自然の中でこの感覚を発達させ進化してきた。しかし、今、自然と触れ合う機会が急速に失われ、この感覚が低下しているのではないかという指摘だ。
このことは、生きるための本能の弱体化にもつながるという。
安川さんの話から、自然と直接触れ合える環境の中で、いろいろな生物との共存を広げ、人間らしい五感を豊かに発展させるという理想がひしひしと伝わってくる。 |
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安川さんは、環境問題に取り組む上で中小企業の利点をおおいに発揮したいと語る。
大企業ではやれないこととして、中小企業では、自由に新しいことに挑戦できる可塑性が高いという。
”東大阪環境ビジネス研究会”にも参加して、いろいろな情報で刺激をもらったり、連携の機会をもてるようにしている。東大阪のものづくりの力が、温暖化や環境問題の解決にいっそう貢献できるのではとの期待からだ。
一方、企業人としての立場から環境問題を社会に広げる活動も熱心に行っている。
あちこちの小学校から、”環境教育”の出前講師を依頼される。「生き物はみんなつながっていること、それぞれがかけがえのない役割を果たしていること」そして、「環境問題を伝えるにも、子どもたちに不安がらせることなく、夢をもってもらいたい」と安川さんは語る。 |
市役所の一階ロビーの展示スペース。東大阪市の推奨品(東大阪ブランド)が紹介されている。環境を守る「アドバンス」の製品も見られる。 |
研究室の戸棚には子どもたちの感想文が大事に保管されていて、「こんなこと書いてくれたんですよ」と目を細める。 |
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後継者の育成といっても、会社の後継者ということでなく、安川さんの場合は、将来の東大阪を担う若者を育てるということだ。
小学校に出かけて話をするというのも、小さい頃から自然環境に関心をもってもらいたいからだ。
安川さんはまた、高校生の職業体験学習や、大学生のインターシップ生も研究室に積極的に受け入れ、育てている。若者と接することで私もエネルギーをもらっていると語る。
「地域の活性化は、次世代を育てることから」と、安川さんは強調した。
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安川さんの研究室で二人の研修生に出会った。
近畿大学大学院生の 板坂真由美さん(左)は、インターシップ生として、安川さんの研究室と大学の両方で研究をすすめる。
布施北高校デュアル生の浅田ひとみさん(右)は、研究成果を特許に結実させようとがんばっている。
二人とも安川さんに見守られながら、伸び伸びとした環境で研修生活を送っている。 |
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ホームページ:株式会社アドバンス |
- 取材を終えて -
冒頭で述べた北極の事態。一方、南極でもペンギンの生存が危うくなっているという。わたしたちの予想を超えた深刻な事態が進行しているようだ。
しかし、安川さんはそれでも楽観的だ。それは、事態を軽く見ているというのではない。人間に対する深い信頼がそうさせるようだ。「きっと、人間はこの危機を乗り越えるだろう」という信念である。
その信念で、子どもたちや若者たちに未来の夢を語り続けているように思える。
安川さんがいうように、全世界の市民が温暖化の現実をしっかりうけとめ、生活面だけでなく、政治・産業・教育の面でも改善をはかっていけば、危機をさけることができるにちがいない。
その過程で、人類は地球とそこに住む生命との新たな共存の一ページを開き、持続可能な社会を実現できるだろう。
安川さんのインタビューを通して、環境問題とともに、夢と希望を持ち続けることの大切さを学ばせてもらった。
通信員 楢 よしき
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