今どうなってるの?!東大阪
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 2016年7月14日掲載
                                   



 
旧枚岡市庁舎(現東大阪市旭町庁舎)は、解体の方針です。しかし、建築関係者か
らは、いまだに保存・再利用の声が止みません。
 2001年に「関西モダニズム建築20選」に選ばれ、国際組織DOCOMOMO(ドコ
モモ)・japan(ジャパン)が、貴重なモダニズム建築であるとして、2013年に「選定建
築物」に指定しています。今回、そのドコモモジャパンの見学会があるというので同行
取材を行い、この目で旧庁舎を見てきました。
  
 
                    目次
 

     
①モダニズム建築の代表作←ジャンプ

  

      ②DOCOMOMOjapan (ドコモモジャパン)見学会←ジャンプ
            
      ③価値再発見のべんきょう会←ジャンプ

      <動画>ドコモモジャパン見学会←ジャンプ
     
   追加情報:コルビュジエ建築 世界遺産登録2016・7・17毎日ニュース ←クリッ
            

   
 
 
モダニズム建築の代表作
  



生駒山西麓に対面する 東大阪市旭町庁舎(旧枚岡市庁舎) 
 20世紀、鉄筋コンクリートの普及とガラスの大量生産を背景に、ヨーロッパでは近代モダニズム建築が興りました。機能的・合理的で、人間の生活を尊重します。権威を象徴するそれまでの建築思想とは一線を画すものです。
 日本に近代モダニズム建築が入ってきたのは戦後です。巨匠ル・コルビュジエ氏に師事した坂倉準三氏は、神奈川県立近代美術館など各地にモダニズムの建造物を建てます。その坂倉準三建築研究所が手がけたうちの一つがこの東大阪市旭町庁舎(旧枚岡市庁舎以降「旧庁舎です。
北東方面からの外観


外観  写真:7枚
 直接建築を手がけたのは、坂倉準三建築研究所 大阪支所の西澤文隆氏東孝光氏“関西のモダニズム建築20選”にも選定されています。この建物は、モダニズムと「和」の調和に特徴がある一方、ル・コルビュジエへの造詣を深めることの出来る貴重な建物であると指摘されています。
 
 構造の特徴の一つは、一階から屋上までを貫く“らせん階段”です。最小限のスペースでコンパクトにデザインされ、無駄のない空間になっています。ル・コルビュジエの設計思想の影響を強く受けています。
地階から屋上までの らせん階段

らせん階段  写真:8枚
 横にエレベータが設置されています。しかし、子どもたちは喜んで、このらせん階段のほうを上り下りします。あそび心を刺激されるのでしょう。
 この光景は、2014年のもので、今は許可がないと建物に立ち入ることが出来ません。
 最上階は広々とした屋上庭園。四方を見渡せるので、小学生がお弁当を持って地域学習をするのにもってこいのロケーションです。階段状の構造物は、野外ライブの観客席として使えそう。実際、そのような使われ方をしたことがあったようです。
屋上庭園の階段状の構造物
 屋上からの眺望は格別です。さえぎるもののない景観は、見ていてあきません。

屋上庭園から見える風景 写真:7枚
 古代はこのあたりは水際で、渡来人の船も寄港したところ。また、東高野街道や暗越(くらがりごえ)奈良街道を行き来した人々の姿を偲(しの)ぶことができる場所でもあります。今、国史跡「河内寺廃寺跡」の史跡公園化が進む中、河内國河内郡の中心地として、貴重な観光スポットになります。

 外観で特徴的なのが、四方にせり上がるように見える大屋根。大仏殿ののびやかな雰囲気を感じさせます。エントランス(入り口)から入ったところは2階となります。建物前面に、新生駒トンネル建設で出た残土で丘を構成しているからです。

入り口の「和」のひさし

枚岡神社のひさしとの対比 写真:6枚
 反り返る庇(ひさし)も大きなインパクトがあります。この建物と対面する枚岡神社の庇に相通じるものを感じます。旧庁舎の庇は、枚岡神社のものがモチーフになっているのでは・・・と、思えてきます。

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DOCOMOMO(ドコモモ)・ japan(ジャパン)見学会



屋上庭園の階段状構造物からの景色 
 6月24日(金)、この旧庁舎において、国際組織ドコモモジャパン(DOCOMOMO・JAPAM)(代表:松隈 洋 京都工芸繊維大学教授)が主催する見学会が行われました。
 ドコモモは、「モダン・ムーブメント近代化運動)にかかわる建物と環境形成の記録調査および保存」のための学術組織です。20世紀の価値ある建築物を調査し、保存する活動をおこなっています。本部は、現在、ポルトガルのリスボンに置かれています。    ※筆者注
ドコモモ会員や建築関係者


らせん階段を上る見学会参加者
 ドコモモジャパンでは、すでに2013年に、この旧庁舎を「選定建築物」に指定しています。この日は、ドコモモの呼びかけで、建築に携わる人々が、市の許可を得て、閉鎖中の旧庁舎に立ち入りました。
 
 耐震性に問題があるといわれる旧庁舎。実際に見て回ったかぎりでは老朽化は感じませんでした。
 内部は、重厚で丁寧に作り上げられています。壁の厚みが大きいため、X線検査室に利用されていたほど。劣化で早急な対応が必要な「C判定」というのは素人目には理解しがたいこと。専門家の方々は細部にわたり建築の素晴らしさを語っておられました。
デザインも斬新


重厚な壁のつくり & 旧議場(2014年当時)
 4階には枚岡市庁舎当時の議場があります。ここは長年、物置とされてきました。
 しかし、音響効果が考慮されていて、市民のための劇場として立派に活用できそうです。

 今はがらんとした二階部分の旭町図書館跡。この二階だけでなく三階も活用して最新の図書館を作れないでしょうか。コンピューターも本格導入した“東大阪市立東図書館”なんて夢でしょうか。この建物全体が市民のための「東部文化会館」として活用されたら・・・と、夢は広がります。
旭町図書館跡


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③価値再確認のべんきょう会

   

鰺坂 徹氏(司会) 松隈 洋氏  橋本健治氏  窪添正昭氏


枚岡市史第一巻口絵より
 旧庁舎見学のあと、近くの市民ふれあいホールで勉強会が行われました。旧庁舎解体をめぐるこれまでの経緯を、日本建築家協会(JIA)近畿支部の窪添正昭氏が報告。ついで、坂倉準三建築研究所大阪支部に籍を置いた橋本健治氏が、旧庁舎の建設にかかわる話をされました。
 ドコモモジャパン代表の松隈 洋氏は、モダニズム建築について解説されました。三人のレクチャーの後、鰺坂 徹氏(鹿児島大学教授)の司会で、参加者との意見交換が行われました。文化遺産に登録することで、国が耐震化費用の半分が補助される制度があることなどが指摘されました。また、モダニズムの巨匠ル・コルビュジエの建築が世界遺産になる中日本で花開いたモダニズムの建築物は、東大阪市の世界的観光の目玉になるという意見も出されました。
 
 その折披露されたのがこのプレート。ドコモモが価値ある建築物と選定したことを示すもの。受け渡しされず、むなしく宙に浮いたまま。
 多くの建築関係者が
「宝物」と認めている旧庁舎。私見ながら、町に潤いとにぎわいをもたらす積極的活用が望ましいと感じました。
 

ドコモモジャパン選定プレート


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 <動画>ドコモモジャパン見学会




    ルポ  F・村上  楢よしき  校正:駒 

 
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