今どうなってるの?!東大阪
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 2016年10月6日掲載
                                   
 
 この夏、生駒山の麓に住む方々や、近鉄奈良線を利用する人から「生駒山のよう
すがいつもと違う」という声が多く寄せられました。ところどころ、木々が茶色に変色
しているというのです。そう指摘されて見ると、確かにポツポツと茶色になった木が目
立ちます。寄せられた声の中には、「このまま生駒の山の木が全部枯れてしまうので
は」といった不安もありました。さっそく「どーなってる」と、調べてみることにしました。

 
   
                    目次
 

         
①ナラ枯れが起きている
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          ②現地で聞き取り調査←ジャンプ

             ナラ枯れの真の原因は?←ジャンプ

       
   ④ナラ枯れの遠因 里山の変化 ←ジャンプ


               <動画>ナラ枯れのようす←クリック
            

   
 
 
ナラ枯れが起きている  パン工 



生駒の山の枯れ木が目に付く 東豊浦から  ※写真にポインタを当てると、色彩を強調した画像となります

 指摘されて改めて生駒山を眺めると、まさしく異常な状態が確認できました。さっそく、東大阪市建設局都市整備部をたずねました。対応してくれたのは“みどり景観課”土屋大輔さん。その原因は「ナラ枯れ」だということが分かりました。ブナ科のコナラやミズナラが主に被害を受けているので、ナラ枯れと命名されています。
生駒山の枯れ木 石切駅付近から


生駒山の枯れ木 河内町から
 全国的に被害が出ています。被害が京都から南下してきて、最近、生駒に達しました。急速に大阪府全域に広がっているようです。土屋さんから基本的なレクチャーを受け、さっそく現場に行って見ることにしました。


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現場で聞き取り調査


枚岡公園のナラ枯れ
 はじめに訪問したのが枚岡公園管理事務所。大阪府民・東大阪市民の憩いの場となっている枚岡公園を管理しています。
 所長の
大家清治さんと、業務アドバイザーの山﨑博文さんにうかがいました。

山﨑博文業務アドバイザーと大家清治所長
& 枚岡公園管理事務所
 ナラ枯れが大阪府で最初に確認されたのが高槻市で2009年(H21)。枚岡公園で疑わしい木が発見されたのが2012年(H24)。今では生駒山全域に被害が広がっているようです。
  
 被害を広げているのはカシノナガキクイムシ(通称カシナガ)という甲虫だそうです。被害を受けている樹木は、コナラ、クヌギ、アベマキなどブナ科の、いわゆるどんぐりがなる木に限定されています。全山が枯れるという心配はなさそうです。
 しかし、子どもたちが
どんぐり拾いに訪れる枚岡公園。どんぐりの木が次々と枯れていったらどうなるでしょう。その質問をぶつけてみました。すると、大きな心配はしていないという返事です。カシナガの被害は老大木に集中し、若い木は被害をまぬかれていて、どんぐり拾いができなくなることはないとのこと。

枚岡公園のナラ枯れ
公園事務所では、行楽にこられた人がケガをされないよう、通路付近の枯れ木の伐採などに全力を挙げておられるようです。
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ナラ枯れの真の原因は?


カシノナガキクイムシ 写真:asahi.com より
 しかし、あれほどの大木が、たかだか5ミリほどの虫の食害によって、2~3か月で枯れてしまうものでしょうか。どうやら、真の原因は別にいるようなのです。
 それは、
ナラ菌とよばれるカビの一種。このカビがカシナガと一緒に木の中に入り込んで繁殖し、木が水を吸い上げる道(導管)をふさいでしまうのです。命の水を断たれては、さしもの大木もかないません。

ナラ菌(Raffaelea quercivora)  森林微生物管理研究グループ 高畑義啓氏撮影
 さらに複雑な話になりますが、このナラ菌は偶然に木に入り込んだのでなく、カシナガが「意図的」に持ち込むのです。カシナガのメスの背中には、菌を育てる器官が備わっています。
 カシナガはこの器官で二つの菌を育てます。一つはナラ菌、もう一つは酵母菌の一種です。カシナガは菌を木の中で繁殖させます。木がヤニなどで反撃してこないよう、まずナラ菌が木を枯らします。もう一つの酵母菌は木の穴の中で繁殖して、カシナガの幼虫のえさとなります。虫と菌の巧妙な共生関係が成立していると考えられます。
カシノナガキクイムシの胞子貯蔵器官
森林総合研究所関西支部 藤井智之氏撮影

カシナガのオスが開けた穿入孔 &フラス(木屑と糞の混合物)
 このカシナガやナラ菌は外来の種ではなく、日本の在来種です。 ナラ枯れは、太古から営まれてきた自然のサイクルの一環で、古い木が倒れ、新しい木が育つという森の再生につながります。それが今、異常なハイレベルで進行しているのが問題なのです。

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ナラ枯れの遠因 里山の変化


府民の森もナラ枯れが (らくらく登山道より)
 ナラ枯れの原因となる虫や菌のことが分かったところで、生駒中腹にあるらくらくセンターハウスを訪ねました。
 府民の森 中部園地・統括所長の
石原委可(ともよし)さんが対応してくださいました。広大な敷地を職員6名と登録職員4名でカバーしています。

中部園地 統括所長 石原委可さん& らくらくセンターハウス

注意を呼びかけるステッカー & 処理中の伐採木
 通常の管理の仕事に加え、ナラ枯れの木を伐採する仕事で大変なようです。全山を処理できないけれど、ハイキングに来られる人々の安全第一を考えて作業をされているようです。
 ナラ枯れの現象について、石原所長は、私たちの生活スタイルの変化を指摘されました。その昔、里山の森林は人々の生活と密接に結びついていました。薪(まき)や炭の供給地で、椎茸栽培の原木も採られていました。ブナ科の木は老木になる前に更新されていたのです。
手入れされた薪炭林 滋賀県湖西


神津嶽を望む」昭和25年頃 枚岡自然と文化愛好会 石橋勇氏提供
 この生駒山も例外ではありません。かつては、大阪全体の薪や炭の供給地でした。左の写真から、戦後すぐの生駒山は、はげ山に近いほど利用されていたことがうかがわれます。しかし、その後の急速なエネルギー転換で、ブナ科の木は放置されました。その大量の木が今や老大木となって、カシナガとナラ菌の格好の標的になっているわけです。

 私たちの生活スタイルの変化が、この現象の遠因であることがわかってきました。小さな虫たちが、里山の変化を私たちに気付かせてくれているようにも思えます。
 ナラ枯れの木を全部伐採するのは、現実問題として不可能です。
①全山が枯れるのではないこと②若いブナ科の木は被害が軽微であること③人畜に病害がないこと、などを聞くことが出来、少しほっとしました。
 景観が見苦しいのは残念ですが、落葉すれば目だたなくなるそうです。

 当面は、ハイキングやどんぐり拾いの際は、念のため頭上を注意をいたしましょう。

上石切町から見た生駒山


猛毒のカエンタケ
 最後に、石原所長から皆さんにメッセージがありました。今年も毒のあるカエンタケが大発生しているそうです。さわった手で目をこするだけで失明にいたる猛毒です。子ども連れの方は、くれぐれも注意して欲しいとのことです。

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<動画>ナラ枯れのようす
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    ルポ 楢よしき  校正:駒 

 
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