2014年1月19日掲載
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今年の「年頭に聞く」シリーズにご登場いただくのは、“マジカルどなべ”で外食産業
界の注目を浴びている、株式会社オーシン社長の藤田剛さんです。NHKの「ルソ
ンの壷」にも登場されています。製品開発や企業のありかたについて、縦横に語って
いただきました。
<動画> マジカルどなべ (株)オーシン訪問←ジャンプ
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異色のキャリアを生かし
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テレビのCMディレクターが藤田剛社長の前職です。まったく畑違いのものづくりの現場になぜ・・・?まずその疑問から入らせてもらいました。
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株式会社オーシン社長 藤田剛さん |
奥さんの父親が先代社長で、だれかが継がなければなりません。前身の会社の創業が明治40年の老舗企業で、社員さんたちの生活もかかっています。意を決して飛び込んだのが5年前のことだったそうです。当初は、身につけた“広告の力”で、業績回復につなげたいとがんばりました。
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しかし、社員からはその姿勢が、ものづくりから一歩ひいているように映ったようです。ここを反省し、それ以来、ものづくりに対する自分の意図をはっきり打ち出すようになりました。ディレクターとして培った企画を伝える力を、ものづくりに生かそうとの考えです。 |
川田2丁目にある 株式会社オーシン |
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“どないかしましょ”の開発精神
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永く現場で愛用されている作業シューズ |
先代の栄助社長は、“顧客からのクレームは宝物”というスタンスで、現場からの難しい注文にこそ製品開発の源泉(ヒント)がある、というのが信条でした。 |
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厨房で働く料理人さんが、滑りにくい靴を望んでいると聞くと、現場での使い勝手を研究します。ステーキハウスで、鉄のステーキ皿が重くて困っているという話を聞くと、鉄とアルミを組み合わせた軽量の皿を開発します。藤田さんは、こういう先代の“どないかしましょ“の精神”を大切に継承したいと語ります。 |
オーシン開発室にて |
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鍋のぐつぐつ感
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次々に改良されてきた製品 |
現在、外食産業から注目をあびているマジカルどなべの開発も、先代社長が、取引先の困りごとの解決を引き受けたことから始まりました。ガスでは、厨房が暑くなりすぎる。IH調理器※に切り替えたいが、IHで使える土鍋はないかという依頼です。この当時、会社として鍋をつくるつもりはありませんでした。
※IHは、induction heatingの略 電磁誘導を利用 した加熱器 |
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しかし、ここから、IH対応の土鍋の研究がはじまり、藤田さんに開発と製品化の仕事が引き継がれてゆきました。さる和食の外食産業からは、「お客さんに料理をお出しする際に、鍋のぐつぐつ感が保たれるように」という要望も寄せられました。外食産業にとって、いかにお客さんに喜んでもらえるかが存亡の鍵です。 |
底にカーボン発熱体を耐熱接着剤で固定 |
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IH調理器から離しても、鍋のぐつぐつ感がある |
オーシンでは、鍋の本体を作る窯元と連携し、試行錯誤を繰り返しました。ずらりと並べられた土鍋は、開発の歴史を物語ります。そして誕生したのが現在のマジカルどなべです。ここにいたるには、特許製品のカーボン発熱体と耐熱接着剤の開発の成功が大きいようです。 |
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しかし、ここで藤田社長が強調したのは、なんと、熟練の技(わざ)の重要性です。
注文主が土鍋の形や土質を指定してくる場合、大きい小さい・深い浅い・硬い柔らかいと、形状はさまざまです。また、同じ窯のものでも一つ一つ微妙に違います。 |
底をうまく削るのが大切 |
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鍋の底に発熱体を貼る前に、底を1~2ミリまで薄く削ります。それは熟練が必要な手作業となります。
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工場主任の ヌツさん(ルーマニア出身) |
この工程を担当するのが、来日15年目となる工場主任のヌツ・ヴィオレル・コスティンさんです。こうして出来上がった製品は、今では、東大阪ブランド※のオンリーワン製品の認定を受けています。IH調理器だけでなく、いろいろな熱源にも対応しています。
※東大阪ブランド←クリック |
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経営のすすめかた
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工場内を見学させてもらっているときに出会ったのが社員の松村さん。発熱体の説明をしてもらいました。ベテランの方と思っていたら、なんと一年目の新入社員さんでした。若い人がはつらつと働く職場は気分がいいものです。 |
発熱体の説明をしていただいた松村さん |
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壁にずらっと貼られている紙は、社員さんたちに毎月一回書いてもらう提言シートだそうです。オーシンの製品が現場でどのように使われているのかを、社員さんたちが実際に見に行く取り組みもあります。 |
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オーシンでは、5S運動を進めています。整理・整頓・清掃・清潔・習慣の向上です。これで作業効率も上がりました。
ただ、研究でボツになったものまで捨てようとしない開発者の習性は本能のようなもの。失敗作から新製品が生まれる可能性もあり、宝の山と考えるようになった、とは藤田社長の弁です。
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仕事の段取りの話をしていただいたベテランの江藤さん |
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ものづくりの後継者を
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藤田社長は、東京都東久留米市にある自由学園の卒業生だと伺いました。そこは、生徒がつくる学校として自治の精神を育むことで知られています。
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東大阪ブランド企業家のイベント フレスポ長田前にて |
ご本人の回想では、入学当初、教室には何もなく、机や椅子を自作することから勉強が始まりました。その環境で、ものをつくる楽しさを体得されたようです。現在の仕事につながる伏線のような気がします。そんな藤田社長の本業以外の取り組みに後継者づくりがあります。 |
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今の東大阪のものづくりが抱える問題の一つが、後継者難や、若い人の起業の少ないことです。
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藤田さんたち東大阪ブランド認定の企業グループは、 目先の問題だけでなく、長い目で東大阪の子どもたちを育てようと取り組んでいます。「何かのタイミングで、ものづくりは楽しいと思ってくれたら」というのがグループの願いです。 |
東大阪ブランド企業家と大商大 ふれあいまつりにて |
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将来の抱負
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インタビューの最後に、将来の抱負を語ってもらいました。
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抱負を語る 藤田剛社長 |
中小企業のまちの発展については、ものづくり環境の長所をさらに発揮する必要を感じるそうです。困ったことがあったら、周りの企業から解決の鍵をもらったり、部品を提供しあったりできます。刺激しあい助け合う関係は、東大阪の得がたい宝物と藤田社長の目に映ります。また、開発での足まわりのよさ、注文主との密接な意思疎通などは、中小企業ならではの長所です。 |
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オーシンの将来については、マジカルどなべが、各ご家庭や海外で愛用されるのが夢です。ネットショップでの販売や、壊れても修理するサービスも開始中とか。東京オリンピックの年に、わが社がどんな立ち位置で活躍しているかを考えるとワクワクする、と抱負を語っていただきました。 |
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株式会社 オーシン ホームページ ←クリック
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<動画> マジカルどなべ (株)オーシン訪問 |
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ルポ:イチロー・S 楢よしき 校正:駒
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