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2016年4月22日掲載 |
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①ご存知ですか?動物霊園&ペットパーク
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パン工 |
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大阪稲荷山動物霊園 & ペットパーク から見た西の方角
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阪奈道路 大阪方面下り阪 |
阪奈道路を利用するドライバーの人なら、見慣れた看板です。中の様子に興味をもたれた方も多いのではないでしょうか。
そこで、取材班は初めての世界に足を踏み入れました。 |
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ひっきりなしに車が駆け抜ける騒音から一転、木々に囲まれた園内は静かです。
満開の桜で、華やいでいます。駐車場はその数も多く、ゆったりとしています。
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霊園・ペットパーク東入り口 & 葬儀・納骨の建物 |
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眺望のよい石碑墓地 & 合同供養塔 |
石碑墓地のある高台からは、大阪平野が見渡せます。ときには淡路島まで見えそうです。
時折、花をもった墓参の方が見えます。墓前に敷物をしいて、石碑に語りかけておられます。心のつながりの深さがうかがえます。
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火葬場では、ちょうど、若い夫婦がその前に立ちつくしています。涙ぐむ奥さんをご主人がなだめる姿がありました。
会館の一室では、今まさに葬儀の最中のようです。読経の声が聞こえてきます。
元気の源(みなもと)となり、家族の絆ともなった「かわいい伴侶(はんりょ)」を失うことは、大きな心の痛みです。
「ペットロス」という言葉がありますが、その一言では片付けられない深さを目撃しました。
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園内にある稲荷山神社 |
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園内には6ヵ所のドッグラン グループで貸切も可です |
ところが、この場所は、動物慰霊の場所だけではありませんでした。元気なワンちゃんもやってきているのです。
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ドッグカフェ & トリミングハウス |
広大な園内には、ペットパークの施設として、6ヵ所ものドッグランがあります。活発に走り回るワンちゃんを見ていると、沈んだ心が励まされます。
そのほか、トリミング、ドッグカフェ、犬猫の一時預かり(ドッグホテル)まで整っています。
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まさにここは、ペットが元気に生きて活動し、旅立つまでを見守る総合施設でした。
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②霊園&パーク波乱の設立秘話
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シエル |
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中の様子があらかたわかったところで、この施設を作ったのはどんな人なのか興味が湧いてきます。さっそく、面会させてもらいました。 |
その人は、理事長の山川幸男さん(72歳)。地元で生まれ育ち、家族は奥さんと息子さんの3人。息子さんはすでに独立されています。石切駅前の食事処「街路樹」のオーナーでもあります。
動物霊園の設立にいたるまでを、ご本人は、「波乱の起業」と表現。その「秘話」を聞かせてもらうことにしました。
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山川幸男さん |
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石切駅前にある 食事処 “街路樹” |
山川さんは、もともと不動産業を営んでいました。バブル期に絶好調の経営が、バブル崩壊に見舞われます。(1991年ごろ)苦境に立った山川さんは、資金を回転させる積極策で解決を計ります。
目をつけたのが、売り出されていた稲荷山の一万坪以上の土地。バブル崩壊で土地の値段が下落していたのです。
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今まで培った交友関係のおかげで、銀行融資が可能となりました。土地を手に入れ、宅地開発に乗り出すことに成功します。
バブル崩壊後の、失われた20年の時期を乗り越えた頃でした。
しかし、そんな山川さんに更なる危機が訪れます。 |
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2008年(平成20年)のリーマンショックです。アメリカから始まった不況は、日本にも深刻な影響を与えました。
まず、地価の下落を招き、宅地開発業を圧迫します。そこに、危機に陥った銀行が融資の差し止めを通告してきました。不幸は重なり、休みなしで働いていた山川さんに病魔が襲います。胃癌による胃の全摘です。
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出口が見えないなか、山川さんの頭には、“広大な土地を活用することでしか打開できない”という漠然としたイメージはありました。
しかし、所有する土地の6割は、市街化調整区域※。そこに宅地を造成することはできません。“どう土地を活用するか?”、悶々とした日々を過ごす山川さんに、ある転機が訪れます。 |
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※市街化調整区域=市街化を抑制すべき区域。原則的に宅地造成などの開発が禁じられている。
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山川さん 背後は、再建した稲荷山神社 |
家でテレビを見るともなしに見ていたとき、奥さんと知人の会話が耳に入りました。亡くなったペットの葬式やお墓の話題です。
初めて聞く話に、「そんな世界があったのか?」と驚きました。若い頃、石切霊園の開設や経営に参画していた頃の思い出もよみがえります。
この時、“ペット霊園として調整区域活用への道が拓けるかもしれない”と、閃(ひらめ)くものがありました。すぐさま、宝塚霊園の視察や行政への打診と、精力的な活動を開始。
幸い、連合町会の同意を得ることもでき、ペット霊園の事業化にこぎつけました。今から10年ほど前のことです。 |
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この霊園事業をすすめているとき、もう一つの出会いがありました。
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東大阪で活動するある動物愛護団体です。ボランテイア活動には頭が下がる一方、事業家としてその不安定さが気になりました。元気な犬たちのためにもこの土地を活用したい、という想いが芽生えました。これが、ペットパーク構想の出発点となりました。 |
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トリミング中 ペットパークにて |
こうして、亡くなった動物の慰霊のための「動物霊園」と、元気な犬や猫たちのための「ペットパーク」が並立する施設が誕生しました。
規模の大きさとともに、このような併設施設は全国的にもめずらしいものです。
山川さんは、スタッフに、形ではなく、心で応対するよう、“心のなれ”を戒めています。 |
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③実現したい2つの夢
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OSJ工房 |
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月並法要で読経する山川さん |
山川さんには、さらに実現したいものがあります。その一つは、ここでおこなっている「老犬ホーム」の取り組みを、全国に広めることです。
今、この「老犬ホーム」は、新聞やテレビで注目され始めています。 |
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高齢でペットを飼えなくなったり、ペットより先に亡くなるケースが増えています。また、ペットが高齢化し、家族で必要な介護ができないケースもあります。いずれにしてもこれが、殺処分という深刻な社会問題につながっています。事前に犬や猫を預かり、責任もって飼育・介護する取り組みが、全国に広がるよう願っています。 |
ペットパーク老犬ホームで介護されるワンちゃん |
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稲荷山頂上付近の 遺跡を整備 |
そして、いま一つの夢は、稲荷山を地域の人々の憩いの場として開放すること。もともとこの地には、明治期に稲荷山遊園地があり、また、文豪・谷崎潤一郎のゆかりの地でもあります。
ここを桜の花でいっぱいにしようと、1000本移植計画を進め、すでに500本の苗が育ちつつあります。
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山川さんは、奥さんの美和子さんのことについて、「私が窮地に陥っているときも楽天的で、一緒に沈んでたら今はなかった」と、述懐します。
最後に、「一度は死を覚悟した身、この二つの仕事を最後のご奉公と思っている」と、力強く語っていただきました。 |
大阪平野を望む稲荷山の高台にて |
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お忙しい中、取材にご協力感謝いたします。
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④<動画>動物霊園&ペットパーク訪問
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東大 |
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大阪稲荷山動物霊園
& ペットパーク
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ルポ R・駒 楢よしき 校正:駒
写真の一部は、大阪稲荷山動物霊園・ペットパーク提供 |
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