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2011年11月7日掲載
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奈良時代の天皇から一般の人びとまでの歌を集めた万葉集。 これに歌われた植物を万葉植物と呼んでいます。
鑑賞用から実用的なもの、現在では雑草とされるものまで様々。 私たちが住む東大阪でも見られる万葉植物を順にご紹介します。 花の名のひらがなは万葉名、カタカナは現代名です。 |
<レポート:酒野>
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あふち(おうち) センダン (センダン科)
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初夏に淡青紫色の花
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センダンの古名は、あふち(楝)です。落葉する高木で、暖かい地方に自生し、大木になることもあります。樹形や小さい葉の姿も魅力的で人家や学校に植えられます。5、6月に淡青紫色の小花が集まって咲く姿は美しいものです。
一言付け加えておけば、諺の「栴檀は双葉より芳し」のセンダンは中国の白檀のことで、あふち(楝)とは別物です。 |
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印象的な実
秋に、淡黄色で長細いだ円形の実がたくさんつきます。葉が落ちたあとも実が残り、実だけの樹形も印象的です。
冬は、1センチほどの実が、凸凹で白っぽくなって地面にたくさん落ちているのもセンダンならではの個性的な光景です。 |
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山上憶良の挽歌
「妻の見たあふちの花はもう散ってしまいそうだ。妻を失って、わたくしの泣く涙はまだ乾きもしないのに・・・」と、山上憶良は悲しみをあふちの花に託して詠っています。妻を亡くした大伴旅人の気持ちになって詠んだものといわれています。このときのあふちの花は、美しいけれど寂しげに見えます。
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万葉の恋の歌
この作者不詳の歌は、一転して明るい恋の歌です。「夏になったけれど、あふちの花は散り去らずに、このままあってくれるかなあ・・・」と、人を恋しく思う心をあふちの花に託しています。このときは艶やかで魅力的なあふちの花を詠っています。 |
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大伴家持兄弟の交流 |
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家持の弟の書持(ふみもち)から兄に宛てたのが左端の歌です。「あふちの花を家に植えたら、山ホトトギスがいつも来るだろうか」と、問うています。“珠”という言葉が使われているのは、当時、あふちの種を連珠にしたとも、ショウブやヨモギとともにセンダンの花も使って薬玉にしたとも考えられています。
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これに対して、兄の家持は右側のように、「ホトトギスがあふちの枝に飛んで行って止まったら、珠と見るほどにあふちの花は散るだろうな」と、返しています。万葉人の生活において、いかに花が大きな位置を占めていたかを教えてくれます。 |
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もうすぐ、枯れ枝に淡黄色の実をいっぱいにつけたセンダンが見られる季節です。少しすると実も落ちていよいよ冬の季節を迎えます。今年は、落ちた実を拾って糸に通してみましょうか。 酒野 |
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<万葉植物探訪シリーズ>以下は 既報の植物 クリックで見られます |
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