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2021年3月21日掲載 |
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昨年の12月17日、ユネスコ無形文化遺産に、日本の伝統建築技術が登
録されました。「へえそうなんだ、伝統は守らなくちゃ」ぐらいにしか思っ
ていませんでした。ところが、その登録された団体の一つが東大阪にあり団
体の会長の会社がおこなう修復工事を過去に二回も取材させてもらっている
ではありませんか。さっそく朗報を取材しました。
index
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日本伝統建築技術が
ユネスコ無形文化遺産に!
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清水寺にてユネスコ無形文化遺産登録を祝う 文化財修理技術保存連盟 (産経オンラインより) |
檜皮葺、杮葺 |
昨年の暮れに日本に朗報が
届きました。国連教育科学文
化機関(ユネスコ)の政府間委
員会は、日本の伝統建築技術
を無形文化遺産に登録の決定
をしました。
正式な名称は伝統建築工匠
(こうしょう)の技 木造建造物を
受け継ぐための伝統技術 と
いう少々長いものです。
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茅葺 |
建造物装飾 |
畳製作 |
建造物彩色 |
左官(日本壁)
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縁付金箔製造
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日本産漆生産・精製
以上の写真は文化遺産オンラインより |
指定は、伝統的な木造建築
にかかわっている木工、左官
、屋根、装飾、彩色、漆(うるし)
、建具など17の分野です。
千数百年の歴史をもつ伝統
建築の技術と、職人の技が世
界で評価されました。まさに画
期的な出来事です。そして、驚
くことに、登録の団体の一つが
私たちの東大阪に事務所を置
いているというのです。 |
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建造物修理 |
建造物木工 |
檜皮葺(ひわだぶき)、杮葺(こけらぶき) |
茅葺(かやぶき) |
檜皮採取 |
屋根板製作 |
茅採取 |
建造物装飾 |
建造物彩色 |
建造物漆塗 |
屋根瓦葺(本瓦葺) |
左官(日本壁) |
建具製作 |
畳製作 |
装潢(そうこう)修理技術 |
日本産漆生産・精製 |
縁付金箔製造 |
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今米の川中邸 |
屋敷林の椿と竹林 |
その団体とは、木工を仕事
にする一般社団法人・日本伝統
建築技術保存会(略称:日伝建)。
事務所は、屋敷林で知られ
る今米の川中邸の中に置かれ
ています。さっそくユネスコ登
録や日伝建の活動について伺
うことにしました。
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一般社団法人 日本伝統建築技術保存会事務所(川中邸内) |
小田原 深雪さん 鳥羽瀬(とばせ)公二さん
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事務所で取材に応じてもら
ったのは鳥羽瀬公二さん。
日伝建の会長さんです。事
務局の小田原深雪さんにも同
席してもらいました。
鳥羽瀬さんは市内の善根寺
に社屋を構える鳥羽瀬社寺建
築をひきいています。昔風に
言えば、堂宮大工の棟梁です。
ユネスコ登録への道のりを
語ってもらいました。
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伝統建築の汚名をそそげ
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一般社団法人・日本伝統建築技術保存会理事会 川中邸にて |
阪神大震災 |
ユネスコ登録に力を尽した
日伝建ですが、その発足は
1995年(平成7)の阪神大震
災がきっかけでした。
当時、伝統建築は、明治以
降の建て方といっしょくたに
され「地震対策に向かない」
など、一方的な汚名を着せら
れます。黙っていられないと、
全国から7~8名の棟梁が立
ち上がりました。日伝建の誕
生です。
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法隆寺五重塔 |
日本建築の一つ、塔の建設は地震
にそなえる工夫が詰め込まれていま
す。地震国日本ならではの技術です。
揺れ・たわみを利用した、しなやか
な構造は世界に誇るもの。現代高層
ビルの設計にも生かされた技術です。
日本の伝統建築にかけられた汚名
をそそぎ、伝統の技術を守る活動が
始められました。 |
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日伝建 研修会 |
日伝建 見学会 |
以降、技術の向上や後継者育成に力
をそそいできました。10年前には文
科省から、選定技術保存団体に認定
されます。そして、次に取り組んだの
が世界へ発信めざすユネスコ登録運
動です。
「法隆寺などが世界遺産に登録され
たけれど、技術も引き継がないと修復
も保存もできない」
「後継者育成のため、技術者に正当
な評価を」との想いからです。
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日伝建は、伝統建築工匠の会に7団体の一つとして参加。
他の分野の団体とも連携し、文科省のバックアップも得なが
ら活動を進めました。審査をしたユネスコからは、資料の提
示などにも称賛を受けました。日本の建築技術が世界的に
正当な評価を受けた瞬間でした。
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登録を祝う伝統建築関係者 左はしが鳥羽瀬さん |
コロナ禍での日伝建のオンライン会議 |
「日本の技術ここにあり」
と、快挙の一翼を担った日伝
建。今のコロナ禍でもオンラ
イン会議を開き、情報交流や
研修に余念がありません。
ふだんの研鑽が技術の向上
と継承を可能にするようです。 |
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御厨 天神社 大屋根等修復中の写真 |
ユネスコ登録の推進者の一人となった鳥羽瀬さん。自身は
宮島の厳島神社、紀州根来寺、大阪城などの修復にもかか
わる名工です。
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御厨 天神社 修復中の写真 |
そして、東大阪の私たちに
とって、鳥羽瀬さんはとても
身近な存在です。
社屋が善根寺にあるだけで
なく、東大阪でよく知られる
古社寺や古民家の修復工事
の多くに携わっておられるか
らです。
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鴻池元町 鴻池新田会所 |
六万寺町 梶無神社 |
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伝統建築技術の一翼を担う茅刈り |
取材のしめくくりに、鳥羽瀬
さんに伝統建築の未来を伺い
ました。意外なことに、まだま
だ困難が続くとのこと。
伝統建築は、茅(かや)などの
材料や、鑿(のみ)などの道具が
いります。また、建具、左官な
どの他職との共同で成り立っ
ています。その一つが欠けても
続けるのは困難なのです。
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伝統建築に関心の高まり |
しかし、一方で新しい動き
もあります。外国の方々が伝
統建築に興味を示し、なによ
り日本の若者が関心を寄せ
はじめています。
鳥羽瀬さんは、建築家とし
て古社寺・古民家の修復だけ
でなく、伝統建築の技術を
新築に生かしたいと、将来へ
の希望を語られました。
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さて、現在の建築基準法では、世界に誇る伝統の建築物が
日本では建てづらいという現実は不可思議です。今回の登録
を契機に、伝統構法の住宅がどんどん建てられるよう望みた
いです。その中で、後継者も育つのではないかと思えます。
鳥羽瀬さん、ユネスコ登録の仕事お疲れ様でした。そして
これからも伝統建築と工匠の技を守る活動にご活躍ください。
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プロフィール
鳥羽瀬公二さん
㈱鳥羽瀬社寺建築 会長
東大阪市善根寺6丁目
1956年(昭和33)生まれ。
鹿児島県出身。16歳の時上京。
20歳で堂宮大工をめざすため古
都奈良へ。法隆寺修復で著名な宮
大工・西岡常一氏のもとで仕事を経
験。東大寺修復が初仕事となる。
各地で腕を磨き、平成5年会社を
設立。日本伝統建築技術保存会会
長として、伝統建築工匠の技をユネ
スコ無形文化遺産の登録に尽力。
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取材:村上、楢 協力 M・川中 写真提供:日伝建
編集:楢よしき 校正:駒 SE:クニヒコ
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