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2022年1月8日掲載 |
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みなさま、明けましておめでとうございます。今年がみなさまにとって良
き年となりますよう祈念いたします。さて古くより“一年の計は元旦にあり”
と申します。正月は、心新たに行く末を考える良い機会です。鳩まめ倶楽部
では、世界にとって、また一人一人にとって避けて通れない気候危機の問題
をご一緒に考えたいと思います。地球をタイタニック号にたとえますと、そ
れぞれの客室や船内では愛憎・悲喜こもごものドラマがあります。しかし、
刻々と近づく氷山との衝突を知りえない悲しみが胸を打ちます。それに対し
気候危機は幸いにも何度も何度も科学的に警告されています。舵を握るの
は私たちです。今回は大阪産業大学山田修教授に話を伺いました。
index
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世界の異常気象
自分のこととして
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スーパーセル(巨大積乱雲)の発生 |
北極の氷が溶解 海面の上昇 |
世界で砂漠化と干ばつ |
乾燥化で山火事多発
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気候変動問題。新年早々に
深刻な話題ですが、だからこ
そ心新たに現実を見つめる必
要があると考えます。私たち
大人の世代だけでなく、子や
孫たちの近未来に関わるもの
ですから。今回、具体的な提
案をして下さるのが、大阪産
業大学の山田修教授です。
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異常な降雨で洪水や山崩れ |
干ばつによる食料危機 |
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地球の大気 |
山田教授にご登場いただく前に少しおさらいをしておき
ます。今のような気候の危機を招いたのが温暖化ガス。
その中でも二酸化炭素(CO2)が主な原因です。温暖化
ガスが地球を覆い熱が宇宙に放出されにくくなったのです。 |
工場から排気されるガス |
産業革命以降、石炭や石油
を使い続けた結果、世界の平
均気温は上がり続けています。
産業革命前より1.5度以
上あがらないようにする対策
が求められています。また温
暖化の進行による環境破壊に
も立ち向かっていかねばなり
ません。
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クリーンエネルギーを
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大阪産業大学教授 ㈱OSU取締役 山田 修氏 |
大阪産業大学東キャンバス15号 |
山田修先生は、大阪産業大
学の工学部交通機械工学科
の教授です。別の一面が㈱オ
ーエスユー(OSU)※代表取
締役。研究者と起業家を両立
させ、日本ではまだまだ数が
少ない存在です。その山田教
授は、かなり以前から地球温
暖化への危機意識をもち、担
当の講座で、石油を使わない
クリーンエネルギーの車の研
究開発を進めてきました。
※大学と個人で共同出資する意欲的
なベンチャー企業。 |
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ギネス記録をもつ乾電池自動車 & 鈴鹿ネワングランプリ単三乾電池クラス優勝 写真提供:㈱OSU |
燃料電池車(実用) |
太陽電池・ソーラーカー |
再エネルギー・フューチャーカー |
学生たちが挑戦のEVカーレース |
パリダカ走破のバイオディーゼルカー |
西安~敦煌走破 |
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理論や基礎研究にとどまらず、ここまでの完成形にも
って行くとは、並外れた実行力の持ち主だと感じます。 |
世界初の熱発電ビークル |
師事する学生たちは実学で
力をつけたに違いありません。
研究成果が今後、身を結ぶ
ことを期待します。
さて、その山田教授が二つ
の提案をされています。 |
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第一の提案
セラミックスで脱炭素
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山田 修教授 |
山田教授のライフワークは
実はセラミックスでした。私
たちは義歯の材料ぐらいしか
認識がありませんが、産業界
では新素材としての可能性に
注目が集まっています。
教授はこのセラミックスを
使って効率的な加熱システム
を開発しました。 |
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仕組みはこうです。ボイラーから水蒸気を送りバーナ
ーで加熱。燃焼室の中の物を燃焼させます。このとき中
間にセラミックスペレットがあれば格段に熱効率が上が
ることを発見しました。 |
高温水蒸気処理システム |
実験によれば1250度ま
で上げられます。この高温水
蒸気処理で草木、野菜の残
滓、動物の排泄物などなどが
短時間で炭素の単体(C)※
になってしまいます。
※バイオ炭と命名
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木のチップが短時間でバイオ炭に |
この生成物バイオ炭は土壌
改良や作物の培地に可能なだ
けでなく。新たなカーボンニ
ュ―トラル(さしひきゼロ)の燃料
ともなります。処理にバイオ
燃料を利用することで脱炭素
に完結した装置となります。
しかし、山田教授はさらに
次のビジョンを持っておられ
ました。
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自動車のタイヤがバイオ炭に |
高温水蒸気の処理をして
バイオ炭(C)を12gつく
れば二酸化炭素(CO2)を4
4g減らすことになります。
固定した炭素を貯蔵する※
ことによって大気中の二酸化
炭素を相対的に減らそうとい
うのです。
※カーボンストックの手法
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山田教授の壮大な脱炭素戦
略を聞かせてもらいました。
SDGsの第13目標を具体
化する提案です。
もう他人ごとではない気候
危機の昨今です。私たち自身
も対策を選択していかねばな
りません。では教授のもう一
つの提案とはなんでしょう。 |
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第二の提案
セラミックスで安全な水
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細菌が多い水を利用するしかない |
第二の提案は飲料水の問題です。先日、ノーベル物
理学賞を受賞された真鍋淑郎教授が、世界で水資源の
格差が広がると警告されていました。 |
未開発国の人々に切実な安全な水の確保 |
現在、世界の子どもたちが
5歳までに年間900万人が
命を落としています。その内
1/3が下痢や脱水症状です。
原因として、病原菌に汚染
された水の可能性が強く疑わ
れます。温暖化はさらにこの
傾向を強めるでしょう。 |
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セラミック水(後述)を説明する山田教授 |
山田教授は、この発展途上
国の劣悪な飲料水問題にセラ
ミックスを利用する打開策を
考案しました。SDGsの第6
目標に関わる研究です。 |
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炭化チタンセラミックスの製法 |
金属のチタン(Ti)と炭素(C)を燃焼合成すると炭化チタン
セラミックス(TiC)ができます。山田教授は、この炭化チタン
が特別な働きをすることを発見しました。水(H2O)を分離
させてヒドロキシラジカル(OH)とメチルラジカル(CH3)
が発生します。
※ラジカル=不安定な原子や分子で、すぐ安定化したいため他のものに付く性質がある |
炭化チタンの特別な働き |
両方ともに殺菌作用があり
ますが、炭化チタンでのみ発
生する炭素を含むメチルラジ
カルに、強い殺菌作用のある
ことが分かりました。
教授は炭化チタンのセラミ
ックスを粉末にして細菌に汚
染された水に混ぜたり、タブ
レット状にして投入したりす
る実験を続けました。
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研究室だけでなくケニアやネパールでも殺菌力や安全
性を確かめ、ついにセラミック水として完成。日本の厳
しい水道法や食品衛生法の総ての基準に適合しました。 |
ケニアでの実証実験 |
しかし、セラミック水※は
単なる細菌のいない水ではな
く、殺菌作用のある画期的な
水です。ミストにして空間噴
霧すれば除菌ができます。
おまけに脱臭作用も見つかり
ました※。
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※商品名 NOCERA WATER:←クリック ※商品名 NOCERA FINE MIST
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世界中で、安全に水道水が飲めるのは数か国 |
発展途上国では、大きな装
置やインフラは期待できませ
ん。人々がいつでもどこでも
簡単にしかも安全に水を飲め
る方法が求められています。
そんな土地では、炭化チタ
ンセラミックスの粉末やペレ
ットが救世主となる可能性が
あります。今後、この技術の
普及が求められるのではない
でしょうか。 |
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山田教授は今春で大阪産業大学を退官されます。
ベンチャー企業㈱OSUの拠点を京都亀山に置き、脱炭
素と飲料水問題をライフワークとして取り組まれます。 |
大阪産業大学 南キャンバス |
東大阪の中小企業とのつき
あいは続けたいと言っておら
れました。教授の一貫した環
境問題への姿勢に学び、私た
ちも環境問題に真摯に向き合
わねばと感じました。
お忙しい中、取材に応じて
いただいた山田教授に感謝申
し上げます。
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取材: 楢
編集:楢よしき 校正:葵 SE:クニヒコ
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