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奈良時代の天皇から一般の人びとまでの歌を集めた万葉集。 これに歌われた植物を万葉植物と呼んでいます。
鑑賞用から実用的なもの、現在では雑草とされるものまで様々。 私たちが住む東大阪でも見られる万葉植物を順にご紹介します。 花の名のひらがなは万葉名、カタカナは現代名です。 |
<レポート:酒野>
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やまたちばな(山橘) ヤブコウジ (ヤブコウジ科)
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“やまたちばな”を詠みこんだ歌を二首ご紹介しましょう。
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写真:生石高原・紀伊の風 より ←クリック
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赤と白のコントラスト
「この雪の消えないうちに、さあ行こう。山橘の実が赤く雪に映えて美しいのを見よう」と、大伴家持が情景を詠っています。赤い実は、冬の間も残って美しいのですが、丈が低いため目立つ植物ではありません。奈良時代の人たちが、華やかとは言いにくい植物にも温かい目を向けているのがうれしいですね。 |
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激しい恋のうた
作者不詳ですが、「山橘が色づくように、私は恋しい気持ちが顔に出てしまいますので、あなたも人目をはばからないでくださいな」 |
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と、詠っています。真っ赤な実の美しさにこと寄せて激しい恋心をぶつけています。あなたなら、こんな歌を贈られたらどう感じますか? |
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漢字では“藪柑子”
昔、やまたちばなと呼ばれたヤブコウジは、北海道から九州までの山林の陰地に自生します。常緑で、草に見えますが10~20センチメートルの低木です。初夏に白い花をつけます。 |
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秋に直径6~8ミリメートルの光沢のある真っ赤な実をつけます。この実をかんきつ類と連想して「藪柑子」と名付けられたようです。
江戸時代から鉢植えにして楽しむようになりました。園芸店では「十両」として売られていることがあります。万両と比べると値打ちが下がるように受け取られかねませんが、それは人間側の勝手な命名です。ヤブコウジの可憐な美しさは万両にひけをとりません。 |
写真:野に山、草原へ より ←クリック |
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マンリョウ(万両)ヤブコウジ科 |
センリョウ(千両)センリョウ科 |
カラタチバナ(百両)ヤブコウジ科 |
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※クリックで写真は拡大します。 |